藤井太洋著 「アンダーグラウンド・マーケット」 感想・レビュー・おすすめ
藤井太洋 著のSF小説「アンダーグラウンド・マーケット」の感想・レビューです。
ネタばれはしてないつもりですが、おおまかなストーリーは含んでいますのでご注意下さい。
「アンダーグラウンド・マーケット」とは
以下Amazonの商品説明から引用
「フリービー」と呼ばれ、仮想通貨「N円」による地下経済圏で生きるしかない若者たちがあふれる近未来の日本。木谷巧も、課税されないN円取引に会計システム変更する“地下”の仕事で報酬を得ている。だが、彼が引き受けたある仕事が、思わぬ事件の引き金となり…。
もう少し詳しくご説明しますと、舞台は2018年で東京オリンピック開催の2年前になります。(東京オリンピックを控えていることもあると思われますが)日本には外国人が現代以上に増えている様な状態になっています。
稼ぎに来ているこの外国人たちは、消費税等の税金を納めないですむ仮想通貨「N円」を好んで使っています。1円≒1N円であるにも関わらず課税されないですむのでお得なわけですね。
そして安く寝泊まりできる簡易ホテルの様な宿泊施設を転々としながら地下経済で働く若者達のことを「フリービー」と本作では呼んでいます。フリーは自由で、ビーは蜂ですね。
このN円で回る地下経済が本作の舞台。本作の主人公(達)は日本人にも関わらず、N円、地下経済という舞台でフリービーとして働く若者(達)になります。
主人公(達)はWebシステムの開発を請け負ってギリギリの生活をしている状態なのですが、引き受けた仕事で思わぬ事件に遭遇し。。。といったストーリーです。
仮想通貨について
仮想通貨といいますと現代では、「ビットコイン」が有名になりましたね。事件にもなり、あまり良い印象を思っていませんが、この様な仮想通貨は、国が発行するお金ではなく、インターネットが普及したことにより企業が発行する通貨といったところでしょうか。
最近では、スマホゲームの「ポケモンGo」内で使用できる通貨「ポケコイン」が仮想通貨認定されるといったこともニュースになりました。
いつの間にか現代社会に溢れている通貨とも言えますが、本作は、その仮想通貨が実際に店舗での支払いにも使えるような時代になっています。
といっても舞台は2018年だと思われますので、あと1年後くらいですが。
藤井太洋 氏 について
著者の長編第2作目の「オービタル・クラウド」の紹介のときにも書きましたが簡単に。
前回記事はこちら
デビュー作は「Gene Mapper」という長編SF小説で、「Gene Mapper」は著者が一個人で電子書籍として売り、Amazon.co.jpの「2012年Kindle本・年間ランキング小説・文芸部門」で1位を獲得するという偉業を成し遂げてます。
そして著者の経歴なのですが、なんとソフトウェア会社に勤められていたエンジニア出身の方で、デビュー作「Gene Mapper」はエンジニアの業務の傍ら書いていたそうです。
エンジニア出身だけあって、コンピュータ、ネットワークなどIT系をはじめとする技術的側面が詳しく書かれているところが魅力です。
そんな著者の長編3作目が「アンダーグラウンド・マーケット」となります。
長編2作目の「オービタル・クラウド」は舞台が2020年と本作よりも少し未来。そして宇宙!大事件!SF!といった感じでした。それと比較すると本作は舞台が2018年で現代の延長線上で、「オービタル・クラウド」よりもやや現実味がある話だったなと感じました。
本作登場の凄腕システムエンジニア
前作同様、本作にも凄腕SE(システムエンジニア)が登場、活躍します。IT関連に関わる社会人の方、学生の方は、出て来る単語に共感が持てるかもしれません(笑)
とはいえ、ギリギリの闘いを繰り広げているので私は真似したくはありません(笑)
さいごに
理系の方はもちろん、仮想通貨の未来を想像してみたい方、とくにシステムエンジニアやネットワークエンジニアの皆さんであれば楽しめること間違いなしです。
文庫版やKindle版も出ていますので気軽に読めるかと思います。(私は文庫版を購入)
未読の方はぜひ♪♪
ではまた!